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6/26/2012

Night Through / Loren Mazzacane Connors

NY地下シーンの即興ギタリスト、Loren Mazzacane Connorsのシングルと未発表音源を収録した編集盤。ジャンルは一応アンビエントとか実験音楽ということになるのだろうか。この人は大変な多作家であり、すでに50枚以上アルバムを発表していて、過去にはJim O'rourkeやDavid Grubbs、灰野敬二などとコラボした作品もある。大体どの作品も一本のギターを爪弾いて鳴らされたアルペジオやドローンだけで構成されている。器用なギタリストではなく、そもそもパーキンソン病を患っているので、普通の人と同じようにギターを弾くことすら出来ないらしい。しかし、彼によって鳴らされる音色はこの上なく感情的であり、とてつもない哀感に満ちあふれている。流れてくる「音」そのものにこれほどまで感銘を受けた音楽は他に無かったと思う。廃盤になってしまっている作品も多い中で、この編集盤はそこそこ手に入りやすいようである。

Room With Sky / John Hudak

「この作品の背後に持つアイデアは、聴き手が晴れた日に日当たりの良い部屋にいる様な感覚を伝えることです。」私の部屋はあまり日当りは良くないが、実際に良く晴れた日に部屋に引きこもりこの曲をかける。ガラス一枚で隔てられた外の世界がひどく遠く感じる。神秘的で掴み所のない音がただただ揺れている。外には素晴らしい世界が待っているというのに、なぜ引きこもっているのだと暗澹たる気持ちになる。そうしてる間も、音は揺らめいている。この掴み所のない音をしばらく聴いているうちに、空間や時間に対する認識や自己という認識が虚ろになり、すべてが輪郭を失う瞬間に出くわす。その瞬間から自我が境界線を持たなくなり、作者のいう”感覚”と自己が未分状態になる。ジャスト60分一切の起伏がないこの曲のクライマックスは輪郭を失った自己とその”感覚”が混じり合い、一体になっていることが意識できたときに訪れる。

3/24/2012

Flagment Of Paradise / 杉本拓

フィリップ・ロベール著「エクスペリメンタル・ミュージック」のなかで沈黙のギタリストとして紹介されていた杉本拓は現在既に無音の演奏から方向転換して いるが、無音の演奏を始める前は音響的即興といわれる類の演奏を行っていた。「Flagment Of Paradise」は杉本が音響的即興を始め、その可能性を探っていた時期の代表作である。この後杉本は、突如としてステージでほぼ音を出さない、という 演奏スタイルに変化し、今では即興演奏自体を全くと言っていいほど行っていない。杉本は興味を音自体からコンテクストに移し、現在は作曲によってそれにつ いての実験を重ねている。

11/03/2010

Fluxus Anthology / V.A.

絶叫パフォーマンスの記憶も新しいオノ・ヨーコ等が参加していた芸術運動フルクサスのコンピレーション。ナム・ジュン・パイクやラ・モンテ・ヤング等参加しており、フルクサス関連グッズとしては入門的な位置付けかと思われる。「Imitating TheSound Of The Birds」という口笛で鳥の鳴き声を真似る作品があったり、『狂気のオルガニスト』オノ・ヨーコの参加作品が「ToiletPiece」だったり、笑えるものばかりで飽きずに楽しめる。ライナーノーツの代わりに主謀者ジョージ・マテューナスによるアートマップ付き。

3/28/2010

Orgasm / Cromagnon

1969年作。ESP(NYのフリージャズレーベル)でも屈指の奇盤として名高い作品。全編謎の電子音やパーカス、ノイズ、奇声などのコラージュからなるが、終始漲る異常な熱量やカルトな(或いは何処ぞの民族のような?)雰囲気などで、意外と通して聴けてしまう。むしろ、筆者は時々聴きたくなる。タイトル通り(後の再発時に「CAVE ROCK」と改められるらしいが)プリミティブな方向へ向かっている感じがする。そして、カラっとしてどろどろにサイケな質感。そこはかとなく当時のアメリカの匂い。言葉で説明するのが非常に難しい作品だが、Tr.1 なんかは音楽的に格好いいと思う人も多いのではないか。

precious moments / 恩田晃

竹村延和、山塚EYEらとのAudio Sportsの他、文筆家、写真家でもある恩田晃の2001年発表作。映画のサウンドトラックのような、或いは記憶の断片が散りばめられたような、めくるめく音響作品。Luc Ferrariのコラージュ作品にも通じる音だが、底のない空間をたゆたうような音・構成は、水墨画や俳諧なんかにも通じて、極めて日本人的な感性のように筆者には思われる。アナログな質感やナイーブさも、ちゃんと引き受けた上でやっていそうで、とても良いと思う。

11/29/2009

Dumb Type 1985-1994 / Teiji Furuhashi+Toru Yamanaka (1996)


パフォーマンスグループ・ダムタイプの劇中音楽を集めて再構成した作品。古橋悌二氏(故人)と山中透氏の共同作業により作られた小品集といった趣き。ミニマルな電子音・ミュージックコンクレートなものがメイン。元は劇中音楽ということもあり、際立った派手さはないのですが、どうにも湿っぽさというかエモーショナルなものが感じられて、それはヒューマンなものというよりは、徹底してリアリスティックで都市的であり、文明への透徹した視線を感じさせるといったらもうダムタイプ本体ですが、ともすればチープな電子音にも確かな質量というか、生とか死とかの匂いが漂っているような気がして、たまに無性に聴き返したくなります。昔PSで「DEPTH」という、イルカが海の中で音を集めて音楽を作っていくという不思議なゲームがあって、その音楽(ヴィジュアルも)が素晴らしかったのですが、久々にこのCDを聴いたら何故かそれを思い出しました。

MEETING at E840 / Kurosawa Hayato+Kato Hiroshi


この演奏にはいくつかのルールがあります。聴き手にはそこにどんなルールがあるのかを考えて頂くことを、私は要求します。この音楽は「気持ちいい」「音がいい」等という曖昧で主観的な感想を拒否します。演奏者がそうであるように、聴取者もまた、聴くためのデジタルな構造・枠組みを自分で用意しなくてはいけません。なんてね。
www.myspace.com/ongakukoubo