11/29/2009

Dumb Type 1985-1994 / Teiji Furuhashi+Toru Yamanaka (1996)


パフォーマンスグループ・ダムタイプの劇中音楽を集めて再構成した作品。古橋悌二氏(故人)と山中透氏の共同作業により作られた小品集といった趣き。ミニマルな電子音・ミュージックコンクレートなものがメイン。元は劇中音楽ということもあり、際立った派手さはないのですが、どうにも湿っぽさというかエモーショナルなものが感じられて、それはヒューマンなものというよりは、徹底してリアリスティックで都市的であり、文明への透徹した視線を感じさせるといったらもうダムタイプ本体ですが、ともすればチープな電子音にも確かな質量というか、生とか死とかの匂いが漂っているような気がして、たまに無性に聴き返したくなります。昔PSで「DEPTH」という、イルカが海の中で音を集めて音楽を作っていくという不思議なゲームがあって、その音楽(ヴィジュアルも)が素晴らしかったのですが、久々にこのCDを聴いたら何故かそれを思い出しました。

MEETING at E840 / Kurosawa Hayato+Kato Hiroshi


この演奏にはいくつかのルールがあります。聴き手にはそこにどんなルールがあるのかを考えて頂くことを、私は要求します。この音楽は「気持ちいい」「音がいい」等という曖昧で主観的な感想を拒否します。演奏者がそうであるように、聴取者もまた、聴くためのデジタルな構造・枠組みを自分で用意しなくてはいけません。なんてね。
www.myspace.com/ongakukoubo

岡本舞子コレクション / 岡本舞子 (2004)

1985年デビューのアイドル歌手、岡本舞子の全シングルAB面を収録のベスト盤。個人的にはバックの作家陣、そして歌手本人の「歌心」とでも言うべきもので大きく評価の如何が分かれる80年代アイドルであるが、この方に限っては当時14歳とは信じ難い抜群のピッチ感、情感を湛えた歌唱に脱帽。とりわけ馬飼野康二と、阿久悠/山川恵津子タッグ提供のポップス強度高しな楽曲が押しなべて出色の出来。ひとつの理想的到達点を
見た。⑨

Quique / Seefeel (1993)

「My Bloody Valentine meets Aphex Twin」とも称されたUK出身の4人組バンド。本作は1993年にtoo pureより発売された1stで、ミニマルに繰り返されるフレーズと極端なダブ/エフェクト処理によるくぐもった音像が魅力的。今ではポストロック/エレクトロニカの走りとも評されています。この頃はまだロックバンド的な爽やかさが辛うじて残っているものの、この後WARPに移籍し2nd、3rdとリリースを重ねるにつれ作風がどんどん先鋭化していき、出自不明かつサイケデリックな謎の音響が繰り広げられていくことに。WARP移籍後がエイフェックスのアンビエントワークスのvol.2ならこの頃はvol.1に近く、気楽に聴ける感じもありつつ、tr.4など後の展開が垣間見える瞬間もちらほらとあります。本作は2008年にtoo pureより奇跡の再発を果たし、最近ではベースにDJ Scotch Egg、ドラムにE-da(ex.BOREDOMS、AOA)という英国在住の日本人2名(なんとも驚きの顔ぶれ!)を加え、ライブ活動も再開している模様。

君に届くかな、私。 / 南波志帆 (2009)


かつてCymbals、yes, mama ok?などを擁したインディーポップレーベルの雄LD&Kが、元Cymbals矢野博康を引き続きプロデューサーに据えて送り出す、16歳シンガーの2ndミニ。個人的には矢野作のバキバキシンセポップM-1、キリンジ堀込高樹作のM-2の流れからして昇天。よしのPら気鋭のトラックメイカーを囲ってリリースされた1stのリミックス盤企画にも顕著だが、「初音ミク世代」への訴求力高めなサウンドプロダクション。⑧

Roomic Cube / 嶺川貴子 (1996)

かつては渋谷系(笑)の女王として活躍し、現在はコーネリアスの嫁として有名な嶺川貴子の96年の作。タイトル通り、部屋の中で聴くのにぴったりな内向的な全体の印象だが、声の独特の浮遊感とバンドの重厚感(Buffalo Daughterが参加している)が相反することなく同居し、清清しいサウンドを作っている。実はハル・ハートリーの映画に使われていたりと、海外からの評価も高い。単なる癒しとはまた一味違った、優しく心地
よいエレクトロニカポップ。

Ire Works / Dillinger Escape Plan (2007)

アメリカのカオティック・ハードコアバンドの3枚目。切れ味抜群の電子音と超絶バンドサウンドが特徴だが、今作はNine Inch Nailsを彷彿とさせる感傷的な曲があれば、ポストロック的な曲もあったりと、バンドの持つ幅広い音楽性が際だつ内容となっている。類い稀な疾走と激情が39分に詰め込まれたこの作品は、メタルコアファンに限らず要チェック。

The Sun Awakens / Six Organs Of Admittance (2006)

米西海岸のアシッドサイケムーヴメントの中心的な存在であるベン・ チャスニーのソロ・プロジェクト。8トラックレコーダを手放した初のスタジオ録音が奏功し、その深淵さは他の作品と一線を画している。 死の匂いが漂う印象的なテーマが爪弾かれるかと思えば、耳を引っ掻き回すような轟音ギターが飛び出す曲群が意外なほどコンセプチュアルに連なり、ラストの23分にも及ぶ大作サイケドローンでクライマックスに達する。

Let It Be... Naked / The Beatles (2003)


解散期にあった最後の作品で、よく「まとまりがない、バラバラだ」と言われる気がするのですが、これまたどうでしょうか。’Get Back’、‘I Me Mine’ のようなケンカっぽい曲もありますが、1曲入れ替えただけで”Naked”のまとまりようなのですから、アルバムとしてはやはり高いといえるでしょう。’The Long and Winding Road’、’Let it Be’の2曲は、特に間奏に大幅な変更があり、オリジナルに慣れている方には物足りない感があるかもしれませんが、かえってあの素朴さに、じんとくるものを感じないでしょうか。上の2曲におけるリンゴの、極限までにシンプルな8ビートも、”Naked”の名をまさに体 現している名演です。

Beatles For Sale / The Beatles (1964)

とあるファンサイトには、「ビートルズの作品中、内容・ジャケットともに最も地味な印象のアルバム」とあるのですが、どうでしょう。僕はジャケットだけなら『with the Beatles』といい勝負だと思います。内容も、確かに地味かもしれませんが、コーラス・ワークやカバー曲アレンジの巧みさには、過渡期にあった彼らの成長が、地味に(?)あらわれていないでしょうか。2枚の映画サントラの間にあって、相対的にいくらかマージービートっぽくない音も、いい味出してます。

The Teenagers / Reality Check (2008)

NMEのやかましい宣伝の元に華々しくデビューした、フランス出身エレクトロポップバンドの1stアルバム。この上なく胸キュン(死語?)な美メロにつたないモノローグが乗っかって、悶絶するほどおセンチなのにどこか冷めた世界観を展開する。サウンドも演奏もチープの極みだが、それが刹那的な雰囲気をますます加速させていて楽しめる。騒々しくも虚無感漂う、我らが00年代の愛すべき1枚。

Colossal Youth / Young Marble Giants (1980)


70年代の後半から数年間、「若き大理石の巨人」と名乗るバンドがウェールズでひっそりと活動していたことをご存知だろうか? 当時 隆盛を誇ったパンクのDIY精神を受け継ぎつつ、極限までシンプル に研ぎ澄まされたミニマルなポップ・ミュージックを短い期間に作り上げた。彼らの静かで私的なパンクに影響を受けた人は多く、エヴリシング・バット・ザ・ガールなどのフォロワーを生んでいる。 80年にラフ・トレードから出ていた本作だが、近年の再結成を機にドミノから再発されたので、是非ともお手に取ってみてほしい。

11/27/2009

Graham Smith Is The Coolest Person Alive / Kleenex Girl Wonder (1997)

ナチュラルなlo-fi(重要)ポップの白眉。年代やスタイルからBen Leeが想起されるが、60'sアディクトが随所にみられるツボを得たポップセンス、ギターと歌の下手さは彼を上回るのではないか。悪ぶらず、鬱屈せず、弾けまくりな10代の賛美歌集。肥大化したエゴ丸出しキャラ、キッチュなコラージュセンスを含め素晴らしい。