3/28/2010

Orgasm / Cromagnon

1969年作。ESP(NYのフリージャズレーベル)でも屈指の奇盤として名高い作品。全編謎の電子音やパーカス、ノイズ、奇声などのコラージュからなるが、終始漲る異常な熱量やカルトな(或いは何処ぞの民族のような?)雰囲気などで、意外と通して聴けてしまう。むしろ、筆者は時々聴きたくなる。タイトル通り(後の再発時に「CAVE ROCK」と改められるらしいが)プリミティブな方向へ向かっている感じがする。そして、カラっとしてどろどろにサイケな質感。そこはかとなく当時のアメリカの匂い。言葉で説明するのが非常に難しい作品だが、Tr.1 なんかは音楽的に格好いいと思う人も多いのではないか。

precious moments / 恩田晃

竹村延和、山塚EYEらとのAudio Sportsの他、文筆家、写真家でもある恩田晃の2001年発表作。映画のサウンドトラックのような、或いは記憶の断片が散りばめられたような、めくるめく音響作品。Luc Ferrariのコラージュ作品にも通じる音だが、底のない空間をたゆたうような音・構成は、水墨画や俳諧なんかにも通じて、極めて日本人的な感性のように筆者には思われる。アナログな質感やナイーブさも、ちゃんと引き受けた上でやっていそうで、とても良いと思う。

3/27/2010

Empire of Passion/Splice Of Life / Factrix

サンフランシスコで1978年から4年だけ活動した、インダストリアルのパイオニア、Factrix1st EP。収録曲は、冷え切ったメタルパーカッションが印象的なEmpire of Passionと、不気味な効果音が終始飛び交うSplice of Life2曲。一見、手の付けようのない音盤のようだが、全編を貫くトライバルなビートが予想外の親しみやすさを演出しており、見事な仕上がり。

xx / The xx

ロンドン郊外のWandsworthから現れた4人組、The xx1stアルバム。各メディアが大絶賛したので、一大学生から今さら言うことは無いかも知れないが、世紀末の憂鬱を引きずりながら育ってしまった今の若者の温度感を、最小の音数で表現してしまう卓越した才能には、ただただ舌を巻くしかない。雰囲気に頼りすぎて、根本的に工夫に欠ける感は否めないが、次作では上手く修正してくれそうな、期待の持てるバンドである。

1976 Solo Keyboard Album / George Duke

個人的に「1976」という年、その字面には神性さえ感じてしまう。使用楽器は70sビンテージキーボードオールスター+ドラムのみという男気、それも全編ジョージ・デュークひとりによるオーバーダビングという常軌を逸した、全くもって俺に良しな盤。正直言って、のっけから異常なテンションで音の粒が眩いばかりに乱舞する一曲目『Mr. McFreeze』にこのアルバムの魅力は全て集約されている。宇宙に飛んで行けます!

1976 / The Keyboard Circle

昨年発掘リリースされた、トゥーツ・シールマンス翁とも懇意だった稀代のFender Rhodes狂い、Rob Franken氏を含む、Rhodes二台&バカスカドラムのオランダ人トリオによるスタジオライブ盤(音像も最高)。鍵盤奏者二人はアナログシンセも併用、ベースとオブリガートを入れてお互いにバックアップするというニクさ。これ以上のものが存在するかという程に史上最強のRhodes盤。(だって延々Rhodes弾いてるんだもん…)

Stars/Time/Bubbles/Love / Free Design

正規の音楽教育を修めたバンドなんてつまらない、なんてお思いでしょうか?Free Designことデドリック兄妹の持ち味は、楽理を身につけたメンバーたちの編み上げるジャズやソウル、クラシックさえ飲み込んだ高度なアレンジ、そして細やかに構築されながらもあくまでポップスとして豊かな感情を探り当てずにおかない曲作りにあります。クラヴィネットの軽やかなリフレインから幕を開ける"Bubbles"を筆頭に息つく間もなく続く音楽はさながらマーブル模様の白昼夢。だからといって、リズムセクションはそのインテリジェントなグルーヴを隠そうとはしません。この長く不思議なタイトルのレコードに詰まった驚きと幸福なハレーションの連続は、目眩くばかりのポップ・ミュージックとして泡沫の時間を、忘れがたい時間を残してくれるはずです。

Amendoeira / Bebeto Castilho

柔らかな彩りに溢れる和音、ポルトガル語の転がるような子音の遊び、そしてそれらをしなやかに包み込み弾むサンバのリズム。ところでナイキのCMで流れた「マシュケナーダ」を覚えている人はいるのかどうなのか、実はその演奏をしていたTamba Trioの名ベーシスト、フルーティストであったのが本作のリーダー、ベベート。前ソロ作から数えて30年のブランクを全く感じさせない、静かな確信すら漂わせた"ブラジルの音楽"をレコードに刻み残してくれました。しゃがれた音色にリズムの秘密を一杯に詰め込んだベース、チェット・ベイカー譲りのユーモアを振りまきながらもその根っこには憂愁さえ覗かせる彼の歌は、たとえば真昼時に射す陽の光の喜び、そしてその陰に満ちる暖かさを思い出させてくれるかもしれません。長く長く音楽を続けるということ、その最良の答えの一つがこのレコードにあるのではないでしょうか。

Inspiration Information / Shuggie Otis (1974)


リズムボックスがことこと刻むミニマルなビートの上で、ソウルフルだが控えめなギターやオルガン、軽やかなストリングスが融け合う。ほぼ全楽器を担当したShuggie(当時21)による究極のハイクオリティ宅録アルバムといえる。即興による緊張感とは対極の、完成された優美な質感をもった世界。ブルース仕立てのファンク、ソウル、ダブ。最後は長尺のスピリチュアル・ジャズ? あまりに多彩かつアブストラクトで、小ネタ集の趣もあるために、サンプリングの格好の材料ともなった。

Made in Fuckoka / Anderson

Anderson2作目。前作同様PANICSMILEとロレッタセコハンが中 心となっているが、その他のメンバーが若干異なっている。また、前作が全トラック1分前後だったのに比べ、今作は最初のトラックが15分超えしている等、 長めにカットアップされているものが多い。199812月に録音されたものらしく、前作のライナーノーツには19985月とあるので、僅か7ヶ月で2 作目ということだが、好き勝手即興演奏なのでそんなに驚くべきことではない。こちらもサンレインレコードでネット販売されている。

29Anderson / Anderson

今から遡ること12年、1998年にPANICSMILEが盟友ロレッタセコハンと当時の福 岡アングラ人脈を使って呼び寄せた数人(中にはNUMBER GIRLCDジャケットのデザイナーなんかも)も加えてスタジオで好き勝手やった音源。8 時間にも及んだらしい録音からカットアップされた1分前後のトラックが29トラック入っている。ちなみにこのCD、同年開催のイベントでの赤字補填が目的 だったらしい。果たして当時何枚売れたのか・・・?現在はPANICSMILE吉田氏が店長を務めていたサンレインレコードでネット販売されている。

enClorox / 54-71


世界唯一のスカ・コア(スカスカなハードコア)バンドを自称する4ピースバンド、54-71のメジャーデビューアルバム。極端に音数の少ないスカスカな演奏に、全編英語のラップを放つ、超個性的でストイックな音楽性を持つ彼らだが、メジャー第一作目だからなのか、このアルバムではそんな彼らのポップな一面が垣間見える。解りやすいメロディーがいつもの彼らの曲よりも多いのは確かだが、別に音が厚くなったわけでも、キラキラした音があるわけでもないので、「何を以って音楽をポップと感じるのか」と考えさせられる。いずれにせよ、M-7what color」は名曲。こんなにスカスカなのに、こんなに温かく優しいなんてズルい。

Gold Experience / The Artist Formerly Know As Prince

殿下ことプリンスが、「プリンスの死」を宣言し、自身の名を「O)+>」としてから、二作目のフルアルバム。そして彼が「O)+>」のデビュー作とした作品。現在は廃盤となってしまっている作品ではあるが、彼の数多くのリリースの中でも最もポップで明るく開けた印象を受ける作品のうちの1つであるように思う。キラキラと輝きながらも混沌と流れていく60分間は、まさに「黄金の体験」である。特に、アルバムの最後を飾る「Gold」は圧巻。セールスも振るわず、明らかに過小評価されている作品のように思うので、より多くの人に聴いて欲しい作品。

712 / Shonen knife


少年ナイフの音楽で遊んでいるところが大好きです。簡単そうでなかなかできないことをやっていると思います。特にメジャーに移籍するまでの初期4作は遊び精神で溢れています。そのなかでのメジャー前のアルバムはパンク,フォーク,ヒップホップ,ビートルズのカバーなどとても多彩なジャンルを彼女たちらしくローファイに演奏してるのがとてもかっこいいです。歌詞もダイエット、牡蠣、大阪、ブランドバックなどまさに音楽で遊んでるアルバムです。

S.T / Pains of being pure at heart

ギターポップとシューゲイザーの中間って感じでしょうか。My Bloody Valentineをコンパクトにしてメロディを明るくしたような感じで非常に聴きやすいです。アルバムはアンセム!と言いたくなるような曲がほとんどでとにかく素晴らしいです。彼らの初来日にいったのですがルックスも抜群で単純明快、とても健康的なバンドでした。これからもっと人気がでるんじゃないでしょうか。

Helen Merrill / Helen Merrill

”ニューヨークのため息”ヘレン・メリルが、クリフォード・ブラウン(tp)と共演でレコーディングした一枚。村上春樹が#6Born to Be Blue』について、「ブルーではあるものの、決して陰鬱ではない。優しく、美しく、洒脱な歌だ。」と言っていますが、アルバム全体がそのような雰囲気に満ちており、一面に青のフィルターがかぶせられたジャケットは、まるでそのことを象徴しているようです。54年録音。

Green Onions / Booker T.& The M.G.'s

62年デビュー。「.」と「'」の場所を覚えるのが結構たいへんなんですが、頑張って覚えてあげてください。黒人ブルースのレーベル、スタックス・レコードの出身で、バック演奏からバンドデビューして有名に。黒い中にもリーダーのBooker T.のオルガンがメロウで洗練をかけてます。彼らは登場しませんがスタックス・レコードは『キャデラック・レコード』として最近映画にもなりました。

The Reminder / FEIST

iPod nanoCMに「1234」が使われてチョイ売れした、カナダ出身女性シンガーファイストの3枚目。とにかく声が反則的に素晴らしいです。ギター弾き語り+ハスキーボイスは同郷カナダのジョニミッチェルを彷彿とさせますが、ロックしてたりthe bird and the beepsappっぽいちょいエレクトロ寄りになってみたりと結構深い。前作に比べると比較的静かな印象。しかしオシャレさと泥臭さの絶妙バランスが心地よいです。別プロジェクトとしてカナダの超大所帯バンドBroken Social Sceneにも参加していて、こっちではガチでロックでカッコイイ彼女も見られます。

一億年レコード / まつきあゆむ

自宅録音家まつきあゆむの28曲入り5枚目。本人にメールして買うダウンロード販売のみという流通形態の方が話題になってますが、内容も素晴らしいです。コンセプト(?)は「MP3でも全然泣ける。」宅録の箱庭感があって、歌も何とも言えないピッチの外れた感じだけれどそこがいい。基本的にはポップでわかりやすいです。ビートルズっぽい変なパンニングもポイント。ビートルズやくるりやMOTHER2が好きな現代っ子による2010年の音楽。あったかいアルバムです。