柔らかな彩りに溢れる和音、ポルトガル語の転がるような子音の遊び、そしてそれらをしなやかに包み込み弾むサンバのリズム。ところでナイキのCMで流れた「マシュケナーダ」を覚えている人はいるのかどうなのか、実はその演奏をしていたTamba Trioの名ベーシスト、フルーティストであったのが本作のリーダー、ベベート。前ソロ作から数えて30年のブランクを全く感じさせない、静かな確信すら漂わせた"ブラジルの音楽"をレコードに刻み残してくれました。しゃがれた音色にリズムの秘密を一杯に詰め込んだベース、チェット・ベイカー譲りのユーモアを振りまきながらもその根っこには憂愁さえ覗かせる彼の歌は、たとえば真昼時に射す陽の光の喜び、そしてその陰に満ちる暖かさを思い出させてくれるかもしれません。長く長く音楽を続けるということ、その最良の答えの一つがこのレコードにあるのではないでしょうか。
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