11/03/2010

東ファウンテン鉄道 / the ARRWOS

坂井竜二(Vo) 率いる名古屋出身のロックバンド、the ARROWSのインディーズ1st アルバムにして、初の日本全国展開作品。現在は廃盤。某邦楽ロック専門雑誌を読んで育ったという彼らは、様々な文脈の音楽の要素を巧みに組み合わせ、それでいていやらしくなく、自然と彼らの音楽にまとめてみせる。この1 枚を聴けば、メジャーデビュー後のチャラチャラしたパブリックイメージ(確実に売り出し方を間違えていると思う)とは異なり、実はかなりストイックな実力派バンドであることがよくわかるはず。特に、疾走感溢れるビートにノイジーなギターが乗り、浮いた歌詞でさらりと仕上げたM3「ロックンロールダンシングガール」や、緩急の激しい至高のオルタナロックM4「風待ち」は名曲。隠れに隠れた、来る再評価を待つ邦楽ロックの名盤。 

Single Collection and more / Folder+Folder5

先日、13 年越しにもなる私的再評価が俄然実現したFolder(5については後述) のシングルベスト。幼少の頃ポンキッキーズで耳にしていた頃には気付くべくもなかった、ヤング三浦大知のソウル神童ぶりには舌を巻くばかり。Folder 期におけるコモリタミノル、長岡成貢らによる黄金期SMAP よろしくのPSYCHO ~にグルーヴィーなサウンドプロダクションは珠玉だが、Folder5になってからの軽薄極まる楽曲は申し訳ないが産廃レベル。満島ひかりェ…

Souvlaki / Slowdive

シューゲイザーと括られることが多いけど、空間系エフェクトをかけまくったサウンドはどちらかといえばコクトー・ツインズに代表される4AD 系を引きずっていたSlowdive。そんな彼らの2nd アルバム。まず聴くべきは2nd の本体ではなくリマスター盤Disc2 に収録されている「In Mind」( 元々は『5EP』というシングルに収録されていた)。この曲はエイフェックス・ツインmeets シューゲイザーとも評されたが、実際そう呼ぶにふさわしい名曲。90 年代のロックとテクノの相互乗り入れみたいな作品は今聴くと笑ってしまうようなものも多いが、Seefeel と並んでこれは今でも聴けるどころか未だ乗り越えられていないでしょう。ただしジャケットが謎のダサさ……。なんで?

かまボイラーファースト / かまボイラー

サンボマスター山口隆プロデュース作品。山口隆はコーラスやギターで共演もしている。山口隆がほれ込んだ清水貞信(Gt,Vo)率いる4 ピースロックバンドの1st ミニアルバム。仮面ライダーの怪人の名前から取ったといわれる、一見するとコミックバンドのような名前とは裏腹に、彼らがかき鳴らすのは、鬱ぶった自意識過剰な健康優良児のための邦楽ロック界ではなかなか聴けない、力強くも、どこか懐かしい純真なロックンロールである。M1「ミミタブ」M5「イワナホンドボー」は独特の歌詞にも注目。現在活動休止中であるのが本当に惜しい。

666: Apocalypse of St John / Aphrodite's Child

アフロディテス・チャイルドは後にシンセサイザー音楽や『炎のランナー』『ブレードランナー』などの映画音楽で有名になるヴァンゲリスが1967~1972 年頃に組んでいたギリシャ産バンド。もともとプログレ好きかつヴァンゲリスのファンだったので「ソロになる前に組んでいたバンドかぁ…まあハズレでも良いか」みたいな軽い気持ちで聴いたのだが、これがやられた。この盤は中毒性あります。2 枚組なのになんども聴き返してしまう。これが1971年の作品だってのが凄いなぁ…プログレだからといって別に超絶
技巧だとか、変拍子の嵐だとかそういうわけではありません。単純に良い曲が詰まったアルバムです。よく「プログレ隠れた名盤」と書いてあるのを見ますが、隠れる必要がないと思います。

Rashida / Jon Lucien

柿色バックに、チリ毛に髭。そしてタートル。蒸し暑いジャケの期待を裏切り、さざ波と少女の笑い声で始まる、jon lucien73年の渾身作。故郷カリブ海の薫りを皮切りに(それも適量)、brianwilson もびっくりな旋律と和声。ド70‘s なレアグルーブ。しとしと降るローズ。洒脱なオケアレンジ。純真な恋の詩に潜めた、ニューソウル的反戦歌。ボッサもサンバも。色々ごった煮な、まさに島国気質アルバム。渾々と尽きない発想の波は気持ちいいです。身を委ね、ぼおーっと聴こう。

Hell's Ditch / Pogues

「ケルティック・パンク」なんていうこの上なく胡散臭いジャンルで呼ばれる、いかにも90 年代な怪しさムンムンなこのロンドンのバンドが、アレックス・コックス監督の『ストレート・トゥ・ヘル』のエンディングを担当している、と言えば、西部劇に関心のある方には反応して頂けるでしょうか。あるいは、このアルバムのプロデュースを手がけているのが、若きジム・ジャームッシュと共にその映画に登場するジョー・ストラマーなのだ、などと得意げに言ってしまったら、当たり前すぎて熱心なファンの方に怒られてしまうのかもしれません。しかし、そんな際どいバンドが繰り出す際どい40 分間の終わり間近に突然流れだすリフレインが、ビーチボーイズの『ペット・サウンズ』へのオマージュだと気付いてしまったら、「あんだって?」すら通り越して、もうこのバンドの如何わしさに一時を預けてしまおうと思っても、間違いとは言えない…かも知れません。

Les années 60 / Chantal Goya

もしどこかに人間のいろんな表情を集めた辞典があったら、「物憂い( 女性版)」とかの項に載っていてもよさそうな歌手本人のこの顔は、1 曲でもこのアルバムを聴いてしまうと、どうして私はもっとうまく歌えないのだろうと沈んでいるように見えてしまうかもしれないし、その同じ歌手が「私、日本で6 位よ!」なんて言ってるフランスの映画が1966 年製作だったなんてことを知ったら、日本のチャートがズレてるのは今に始まったことじゃなかったのか…、とますます不安になってしまうかもしれませんが、結局のところ、美人がお洒落と手を繋いでしまったら、見とれてしまうか歯ぎしりするかのどちらかしかないのです。シルヴィー・バルタンやフランス・ギャルだけでは物足りない人も。

Kestrel / Kestrel

某氏に先に発掘されたことが悔しくてたまらない、70 年代クロスオーバー精神を愛する私やあなたの既成概念を拡張してくれること間違いなしの奇跡的音源。まるでタイムトンネルを通じて古今東西のグルーヴィンなバンドサウンドの髄が溢れいで、ひとつの豊潤な音楽世界を連綿と紡いでいくような…。” ポップス的感性” を軸足に、広く深く音楽を聴いている人ほど、その強度は増して感じられるだろう。

Skullgrid / Behold...The Arctopus

エクストリームミュージック界をリードするベーシスト、Colin Marston が参加しているNY のメタルコアバンドの3 枚目。構成はギター+ 12 弦ベース+ドラム。最初から最後まで圧倒的なテクニックが乱舞する一方で、テクニックを披露する媒体=曲ではなく、曲そのものの完成度にこだわりが感じられるのが好印象、というか実際良い曲が多い。キメキメのメタルリフが本当にキマってるM2「Canada」や、ドゥームとメタルコアのスタイルを自在に行き交いながら、リバーブで間合いを聴かせる余裕を見せるM4「You are Number Six」、もろプログレ化するM6「Transient Exuberance」など、幅広い音楽性を難なく取り込んでいるところはさすが1 流ということだろうか。自然なライブ感とテクニックを余すことなく聞き取れるクリアネスを両立させた録音も素晴らしい。

Seek Magic / Memory Tapes

出た当時はただの「清涼なディスコ」だったのが、いつのまにか「2009 年のベストGlo-fi !」に格上げされた、ニュージャージーの Dayve Hawk (a.k.a. Memory Tapes) の1st アルバム。生音系の質感はもろBoards of Canada を感じさせるが、そこに遠慮しないディスコ・ビートや、歌えるボーカル、弾けてるシンセを違和感なく融合させてしまうのは、彼の卓越したセンスを感じる。サウンドプロダクションも秀逸で、ナチュラルで奥行き感も感じさせる音質は特筆に値する。さまざまな面でFlying Lotus のLos Angeles と好対照をなす1 枚だと思う。

Fluxus Anthology / V.A.

絶叫パフォーマンスの記憶も新しいオノ・ヨーコ等が参加していた芸術運動フルクサスのコンピレーション。ナム・ジュン・パイクやラ・モンテ・ヤング等参加しており、フルクサス関連グッズとしては入門的な位置付けかと思われる。「Imitating TheSound Of The Birds」という口笛で鳥の鳴き声を真似る作品があったり、『狂気のオルガニスト』オノ・ヨーコの参加作品が「ToiletPiece」だったり、笑えるものばかりで飽きずに楽しめる。ライナーノーツの代わりに主謀者ジョージ・マテューナスによるアートマップ付き。

8/20/2010

『真夏の夜のジャズ』 Jazz on a Summer's Day

58年のジャズ・フェスティバルを収録した同名映画のサウンドトラックですが、ぜひとも映像と一緒に味わって欲しい作品です。
80分に凝縮されたニューポート真夏の4日間。桟橋の先に色とりどりの舟、青い海を走るヨットの帆と飛沫の白、街を縫って走るジープの楽隊。どこをとっても息を呑むような素晴らしいカットばかりです。
オープニングを飾るジミー・ジュフリーのテナーは波間を転がるよう。セロニアス・モンクもリラックスしていながら、たった1小節であっさり私たちの心を攫っていきます。そして全盛期にあったアニタ・オデイ。「スウィート・ジョージア・ブラウン」に続いて歌う「二人でお茶を」のスキャットは冴えに冴え渡って会場を包み込み、場の空気を作り上げていく様子がそのまま目に映るかのようです。ああ素晴らしい!
フレッド・カッツによる無伴奏チェロ・ソナタを挟んだ夜の舞台は”クイーン”・ダイナ・ワシントンの「オール・オブ・ミー」で幕を開き、謎のゲスト、チャック・ベリーのご登場。神出鬼没なダック・ウォークの行き着く先にはルイ・アームストロング・オールスターズ!父よ…。溢れる幸福感に何度でもうっとりしましょう。
マイルズもコルトレーンもロリンズも登場しませんが、フィルムが終わる頃には既にジャズのとりこになっているあなたも、何度となく「ジャズ」に首を捻らされてきたあなたも、きっと真夏の夜の観客になっているはず。

Maria Fumaça / Banda Black Rio

やはりというか1976年デビューのBanda Black Rio、その翌年発表された俺に良しなファースト。
聴けばわかるが「ありそうでなかった!」という感動に囚われること必至。ノンストップで30分間(とはまさか思えぬほどの体感速度で)走り抜ける強壮剤的ブラジリアン・ファンク。誇張なしに一切ダレる隙を与えぬほどに、ひたすら鉄壁のグルーヴを紡ぎ続けるリズム&ブラスセクションであるが、そこに横溢するのは暑苦しさよりもむしろ瑞々しさ。
たゆたう清冽なRhodesの音色がそれに大きく貢献していることは言うまでもない。

あまぐも / ちあきなおみ

大発見!70sのジャンル越境精神が挑戦し、成功を収めた歌謡×クロスオーバーのキメラとしては異形の大傑作『雪村いづみ/スーパー・ジェネレイション』と『いしだあゆみ&ティン・パン・アレイ・ファミリー /アワー・コネクション』ただ二つだけだと思いきや伏兵が。こちらをバックアップしたのは若かりしゴダイゴの面々。
とはいえ作家陣が河島英五と友川かずきで、ポップス耳的には少々厳しい素材であると言わざるを得ないところを、強制ギプス的にソフィスティケイトしている様が、奇形感をいや増す結果となっている。それでもラストを飾る「夜へ急ぐ人」のロマンチシズム&ストイシズムと、解る人には解るこのジャケデザインだけで大傑作!

Fires in Distant Buildings / Gravenhurst

テクノ界最重要レーベルであるWarpの放つロック……といえば、!!!やバトルズ、最近ではNice Niceのようなダンサンブルなロック、というイメージを持つ人は多いと思いますが、ある時はポストロックのようであり、またある時はほの暗い、極上のバラードを聴かせてくれるGravenhurstも、実はWarp所属のロック・バンドなのです。
3枚目のアルバムとなる今作では摩天楼の隙間を漂う狂気を温度感の低いギターとともに歌い上げていきます。音的な目新しさには欠けますが、タイムレスな良作ではないでしょうか。

溶け出したガラス箱 / 吐痙唾舐汰伽藍沙箱

オリジナル盤は1970年のもの。日本初のインディーズレーベルといわれるURCからのリリース。アーティスト名は「とけだしたがらすばこ」と発音する。ジャックスの木田高介、五つの赤い風船の西岡たかし、フォークシンガー斎藤哲夫の三人から成るフォーク・ユニット。
どこに何を形作りたいのかさっぱりわからないバンド名とタイトル通り、ゆらゆらで不安定なのに、どこかさっぱりとすらしている(?)サイケデリックなフォークを聴かせてくれる。
映画「けものがれ、俺らの猿と」のサントラに収録された「君はだれなんだ」は珍曲にして名曲。

Cut Your Throat / Struggle for Pride


既に伝説化しつつある今里率いるハードコアバンドSFPの2009年発売の4曲入りEP。
カヒミ・カリィをゲストに迎えた3曲目、 ホークウィンド「Silver Machine」のカヴァーが白眉で、けたたましいフィードバックノイズと甘美なメロディ、ヴィブラフォン、カヒミ・カリィのヴォーカルの対比は見事。いつもはウィスパーヴォイスが作為的に感じられるカヒミ・カリィだけど、ここではギターのミックスが大きすぎてヴォーカルがあんまり聴こえないのがプラスに働いたと思う(失礼?)。ちなみにフィードバックしたギターの質感はシューゲイザー的というよりもジーザス・アンド・メリー・チェイン的。

Leave Some Space / Ryo Hamamoto

世田谷のスナフキンこと浜本亮。ギター弾き語りを基本にした歌もので、まず繊細な歌声が心地良いのですが、ギタリストとしても活動しているだけあってギターのアレンジが素晴らしい。バンドのアレンジもシンプルながらハイセンスな感じが。ただやはりこの声とアルペジオだけで構築される浮遊感とふんわりした奥行きはなかなか出せない気がします。若手の弾き語り系シンガーとは一味違う、いい意味で冷めたような小慣れ感が好きです。
天気のいい日に芝生にでも寝転んで聴いたら、ひとしきり考え事をしたあとどーでもよくなってビール買って帰るか、みたいな気持ちになります。たぶん。

Heron / Heron

とにかく、冒頭でたどたどしく幕開けする静かな名曲”Yellow Roses”につきる。内省的な詞と、神々しくすらある美しさをたたえたタイムレス・メロディー。70年イギリスの片田舎の空気をそのままにとりいれた一発野外録音が、彼らの無垢なまでの気負いのなさをいっそう際立たせている。ビートルズのアコースティックな楽曲群に着想をえているのか、不思議と泥臭さやルーツ色を感じさせないところもまたいい。
優しい音色とアマチュアな手作り感を愛でる人へ。テンネン代に聴かれるべき木漏れ日フォークとして。

6/19/2010

dj event @三軒茶屋chrome2010/05/12



honda&ueno 
Hair Stylistics - Wild Hair Style
東京ザヴィヌルバッハ - Horizoning
ASA-CHANG&巡礼 - 花
コーネリアス&三波春夫 - 赤とんぼ
竹村延和 feat.アキツユコ - 魔法のひろば
D Note - Piano Phase(Steve Reich REMIX)
ヒカシュー - 噂の人類
トリコミ戸川 - 彼が殴るの
暴力温泉芸者 - 鮫に喰われたあの娘
PHEW - SIGNAL
倉橋ヨエコ - 損と嘘
ツジコノリコ - Tokyo 2



shimo
David Bowie- Fill Your Heart
Stevie Wonder - If You Really Love Me
Flaming Lips - Buggin'
BMX Bandits - Serious Drugs
Pains Of Being Pure At Heart - Everything with you
サニーデイサービス - 魔法
Rolling Stones - Child of the Moon
Eels - Last Stop;This Town



kimura
R. Stevie Moore - Theme From A.G.(Theme from The Andy Griffith Show )
Silver Apples - Mustang Sally
Pere Ubu - Navvy
Quasi - Little White Horse
The New Pornographers - Twin Cinemas

Archers Of Loaf - Might
Guided By Voices - Echos Myron
Cotton Mather - Camp Hill Operator
The Posies - Solar Sister
Superdrag - Pine Away
Cymbals Eat Guitars - Indiana



sinjawbow
Glint - Freak
Cut Copy - So Haunted
Hannu - Worms in my Piano
Seventh Swami - The Great Attractor



mugen
Onra - My Comet
Clark - Seaweed
Zoo Brazil & Adam Sky - Circle Jerk
Daft Punk - Burnin' (Ian Pooley"Cut Up"Mix)
Alva Noto - U_05
Kutmah - Song Song
Kalimba Deathswamp / Kurt Feelings - Dimlite
Mr. Oizo - W
David Wise  - とげとげタルめいろ
Akufen - Deuxième tournée
Toro Y Moi - Blessa
Kahimi Karie - 
Blue Orb



honjo
CROMAGNON - Caledonia
DUB SONIC ROOTS meets NERVE NET NOISE - 狼煙 (NOROSHI) ROOTS MIX
Jon Rose - Channel Surfer's Guide to the Information Industry
秋山徹次 - ブギーなればこそ
Hair Stylistics - Music for films



kobayashi
Feist - Inside Out
Spangle Call Lilli Line - U-lite
スカートの砂(UA)×マカロニ(Perfume) - MashUp by Tofubeats
COLTEMONIKHA - そらとぶひかり
クリーミィー♡パフェ - 恋するオトメゴコロ
Cymbals - Mr. Noone Special



shimiyo
大島ミチル - Flanerie
李小狼(CV:くまいもとこ) - 気になるアイツ
Gil Scott-Helon - When You Are Who You Are
CITROBAL - Youth「警戒線突破」
澤部渡 - こんな感じ
George Harrison - Pure Smokey
キリンジ - 恋の祭典
小川美潮 - Four to Three
水木一郎、コロムビアゆりかご会 - スター!スター!カゲスター!
及川光博 - バタフライ
鈴木さえ子 - Happy End









オマケ
ELO - Mr. Blue Sky
Japan - Art Of Parties
Dinosaur L - #5 (Go Bang!)





3/28/2010

Orgasm / Cromagnon

1969年作。ESP(NYのフリージャズレーベル)でも屈指の奇盤として名高い作品。全編謎の電子音やパーカス、ノイズ、奇声などのコラージュからなるが、終始漲る異常な熱量やカルトな(或いは何処ぞの民族のような?)雰囲気などで、意外と通して聴けてしまう。むしろ、筆者は時々聴きたくなる。タイトル通り(後の再発時に「CAVE ROCK」と改められるらしいが)プリミティブな方向へ向かっている感じがする。そして、カラっとしてどろどろにサイケな質感。そこはかとなく当時のアメリカの匂い。言葉で説明するのが非常に難しい作品だが、Tr.1 なんかは音楽的に格好いいと思う人も多いのではないか。

precious moments / 恩田晃

竹村延和、山塚EYEらとのAudio Sportsの他、文筆家、写真家でもある恩田晃の2001年発表作。映画のサウンドトラックのような、或いは記憶の断片が散りばめられたような、めくるめく音響作品。Luc Ferrariのコラージュ作品にも通じる音だが、底のない空間をたゆたうような音・構成は、水墨画や俳諧なんかにも通じて、極めて日本人的な感性のように筆者には思われる。アナログな質感やナイーブさも、ちゃんと引き受けた上でやっていそうで、とても良いと思う。

3/27/2010

Empire of Passion/Splice Of Life / Factrix

サンフランシスコで1978年から4年だけ活動した、インダストリアルのパイオニア、Factrix1st EP。収録曲は、冷え切ったメタルパーカッションが印象的なEmpire of Passionと、不気味な効果音が終始飛び交うSplice of Life2曲。一見、手の付けようのない音盤のようだが、全編を貫くトライバルなビートが予想外の親しみやすさを演出しており、見事な仕上がり。

xx / The xx

ロンドン郊外のWandsworthから現れた4人組、The xx1stアルバム。各メディアが大絶賛したので、一大学生から今さら言うことは無いかも知れないが、世紀末の憂鬱を引きずりながら育ってしまった今の若者の温度感を、最小の音数で表現してしまう卓越した才能には、ただただ舌を巻くしかない。雰囲気に頼りすぎて、根本的に工夫に欠ける感は否めないが、次作では上手く修正してくれそうな、期待の持てるバンドである。

1976 Solo Keyboard Album / George Duke

個人的に「1976」という年、その字面には神性さえ感じてしまう。使用楽器は70sビンテージキーボードオールスター+ドラムのみという男気、それも全編ジョージ・デュークひとりによるオーバーダビングという常軌を逸した、全くもって俺に良しな盤。正直言って、のっけから異常なテンションで音の粒が眩いばかりに乱舞する一曲目『Mr. McFreeze』にこのアルバムの魅力は全て集約されている。宇宙に飛んで行けます!

1976 / The Keyboard Circle

昨年発掘リリースされた、トゥーツ・シールマンス翁とも懇意だった稀代のFender Rhodes狂い、Rob Franken氏を含む、Rhodes二台&バカスカドラムのオランダ人トリオによるスタジオライブ盤(音像も最高)。鍵盤奏者二人はアナログシンセも併用、ベースとオブリガートを入れてお互いにバックアップするというニクさ。これ以上のものが存在するかという程に史上最強のRhodes盤。(だって延々Rhodes弾いてるんだもん…)

Stars/Time/Bubbles/Love / Free Design

正規の音楽教育を修めたバンドなんてつまらない、なんてお思いでしょうか?Free Designことデドリック兄妹の持ち味は、楽理を身につけたメンバーたちの編み上げるジャズやソウル、クラシックさえ飲み込んだ高度なアレンジ、そして細やかに構築されながらもあくまでポップスとして豊かな感情を探り当てずにおかない曲作りにあります。クラヴィネットの軽やかなリフレインから幕を開ける"Bubbles"を筆頭に息つく間もなく続く音楽はさながらマーブル模様の白昼夢。だからといって、リズムセクションはそのインテリジェントなグルーヴを隠そうとはしません。この長く不思議なタイトルのレコードに詰まった驚きと幸福なハレーションの連続は、目眩くばかりのポップ・ミュージックとして泡沫の時間を、忘れがたい時間を残してくれるはずです。

Amendoeira / Bebeto Castilho

柔らかな彩りに溢れる和音、ポルトガル語の転がるような子音の遊び、そしてそれらをしなやかに包み込み弾むサンバのリズム。ところでナイキのCMで流れた「マシュケナーダ」を覚えている人はいるのかどうなのか、実はその演奏をしていたTamba Trioの名ベーシスト、フルーティストであったのが本作のリーダー、ベベート。前ソロ作から数えて30年のブランクを全く感じさせない、静かな確信すら漂わせた"ブラジルの音楽"をレコードに刻み残してくれました。しゃがれた音色にリズムの秘密を一杯に詰め込んだベース、チェット・ベイカー譲りのユーモアを振りまきながらもその根っこには憂愁さえ覗かせる彼の歌は、たとえば真昼時に射す陽の光の喜び、そしてその陰に満ちる暖かさを思い出させてくれるかもしれません。長く長く音楽を続けるということ、その最良の答えの一つがこのレコードにあるのではないでしょうか。

Inspiration Information / Shuggie Otis (1974)


リズムボックスがことこと刻むミニマルなビートの上で、ソウルフルだが控えめなギターやオルガン、軽やかなストリングスが融け合う。ほぼ全楽器を担当したShuggie(当時21)による究極のハイクオリティ宅録アルバムといえる。即興による緊張感とは対極の、完成された優美な質感をもった世界。ブルース仕立てのファンク、ソウル、ダブ。最後は長尺のスピリチュアル・ジャズ? あまりに多彩かつアブストラクトで、小ネタ集の趣もあるために、サンプリングの格好の材料ともなった。

Made in Fuckoka / Anderson

Anderson2作目。前作同様PANICSMILEとロレッタセコハンが中 心となっているが、その他のメンバーが若干異なっている。また、前作が全トラック1分前後だったのに比べ、今作は最初のトラックが15分超えしている等、 長めにカットアップされているものが多い。199812月に録音されたものらしく、前作のライナーノーツには19985月とあるので、僅か7ヶ月で2 作目ということだが、好き勝手即興演奏なのでそんなに驚くべきことではない。こちらもサンレインレコードでネット販売されている。

29Anderson / Anderson

今から遡ること12年、1998年にPANICSMILEが盟友ロレッタセコハンと当時の福 岡アングラ人脈を使って呼び寄せた数人(中にはNUMBER GIRLCDジャケットのデザイナーなんかも)も加えてスタジオで好き勝手やった音源。8 時間にも及んだらしい録音からカットアップされた1分前後のトラックが29トラック入っている。ちなみにこのCD、同年開催のイベントでの赤字補填が目的 だったらしい。果たして当時何枚売れたのか・・・?現在はPANICSMILE吉田氏が店長を務めていたサンレインレコードでネット販売されている。

enClorox / 54-71


世界唯一のスカ・コア(スカスカなハードコア)バンドを自称する4ピースバンド、54-71のメジャーデビューアルバム。極端に音数の少ないスカスカな演奏に、全編英語のラップを放つ、超個性的でストイックな音楽性を持つ彼らだが、メジャー第一作目だからなのか、このアルバムではそんな彼らのポップな一面が垣間見える。解りやすいメロディーがいつもの彼らの曲よりも多いのは確かだが、別に音が厚くなったわけでも、キラキラした音があるわけでもないので、「何を以って音楽をポップと感じるのか」と考えさせられる。いずれにせよ、M-7what color」は名曲。こんなにスカスカなのに、こんなに温かく優しいなんてズルい。

Gold Experience / The Artist Formerly Know As Prince

殿下ことプリンスが、「プリンスの死」を宣言し、自身の名を「O)+>」としてから、二作目のフルアルバム。そして彼が「O)+>」のデビュー作とした作品。現在は廃盤となってしまっている作品ではあるが、彼の数多くのリリースの中でも最もポップで明るく開けた印象を受ける作品のうちの1つであるように思う。キラキラと輝きながらも混沌と流れていく60分間は、まさに「黄金の体験」である。特に、アルバムの最後を飾る「Gold」は圧巻。セールスも振るわず、明らかに過小評価されている作品のように思うので、より多くの人に聴いて欲しい作品。

712 / Shonen knife


少年ナイフの音楽で遊んでいるところが大好きです。簡単そうでなかなかできないことをやっていると思います。特にメジャーに移籍するまでの初期4作は遊び精神で溢れています。そのなかでのメジャー前のアルバムはパンク,フォーク,ヒップホップ,ビートルズのカバーなどとても多彩なジャンルを彼女たちらしくローファイに演奏してるのがとてもかっこいいです。歌詞もダイエット、牡蠣、大阪、ブランドバックなどまさに音楽で遊んでるアルバムです。

S.T / Pains of being pure at heart

ギターポップとシューゲイザーの中間って感じでしょうか。My Bloody Valentineをコンパクトにしてメロディを明るくしたような感じで非常に聴きやすいです。アルバムはアンセム!と言いたくなるような曲がほとんどでとにかく素晴らしいです。彼らの初来日にいったのですがルックスも抜群で単純明快、とても健康的なバンドでした。これからもっと人気がでるんじゃないでしょうか。

Helen Merrill / Helen Merrill

”ニューヨークのため息”ヘレン・メリルが、クリフォード・ブラウン(tp)と共演でレコーディングした一枚。村上春樹が#6Born to Be Blue』について、「ブルーではあるものの、決して陰鬱ではない。優しく、美しく、洒脱な歌だ。」と言っていますが、アルバム全体がそのような雰囲気に満ちており、一面に青のフィルターがかぶせられたジャケットは、まるでそのことを象徴しているようです。54年録音。

Green Onions / Booker T.& The M.G.'s

62年デビュー。「.」と「'」の場所を覚えるのが結構たいへんなんですが、頑張って覚えてあげてください。黒人ブルースのレーベル、スタックス・レコードの出身で、バック演奏からバンドデビューして有名に。黒い中にもリーダーのBooker T.のオルガンがメロウで洗練をかけてます。彼らは登場しませんがスタックス・レコードは『キャデラック・レコード』として最近映画にもなりました。

The Reminder / FEIST

iPod nanoCMに「1234」が使われてチョイ売れした、カナダ出身女性シンガーファイストの3枚目。とにかく声が反則的に素晴らしいです。ギター弾き語り+ハスキーボイスは同郷カナダのジョニミッチェルを彷彿とさせますが、ロックしてたりthe bird and the beepsappっぽいちょいエレクトロ寄りになってみたりと結構深い。前作に比べると比較的静かな印象。しかしオシャレさと泥臭さの絶妙バランスが心地よいです。別プロジェクトとしてカナダの超大所帯バンドBroken Social Sceneにも参加していて、こっちではガチでロックでカッコイイ彼女も見られます。

一億年レコード / まつきあゆむ

自宅録音家まつきあゆむの28曲入り5枚目。本人にメールして買うダウンロード販売のみという流通形態の方が話題になってますが、内容も素晴らしいです。コンセプト(?)は「MP3でも全然泣ける。」宅録の箱庭感があって、歌も何とも言えないピッチの外れた感じだけれどそこがいい。基本的にはポップでわかりやすいです。ビートルズっぽい変なパンニングもポイント。ビートルズやくるりやMOTHER2が好きな現代っ子による2010年の音楽。あったかいアルバムです。

1/19/2010

music innが選ぶ2009年ベスト







The Novembers - Paraphillia
Jim O'Rourke - The Visitor
Wild Beasts - Two Dancers
戸張大輔 - ドラム
秋山徹次+中村としまる - 蝉印象派
Marc Ducret - La Sens De La Marche
David Sylvian - Manafon
Broadcast & The Focus Group - Investigate Witch Cults of the Radio Age
Scarlett Sorry - 怒涛のアナタ