12/17/2012

Jordan: The Comeback / Prefab Sprout


「ネオアコ」という言葉は一部の人々が抱えている曖昧な「青春性」とあまりに結びつき過ぎている。この日本国内でのみ通用するワードが、80年代の(特に英米の)音楽を現在から理解する際に障壁となってはいないか?海外のページを注意深く観察していると「Sophisti-Pop」という概念にぶつかる。Aztec Camera、The Blue Nile、Scritti Politti、Prefab Sprout、The Style Council、Swing Out Sister、Orange Juice、Sade、Everything But The Girl などなど……これら全てのグループが「Sophisti-Pop」の名のもとに集約されている。こっちの方が変な恣意性がなくて分かりやすいと思うのだが…ということで選んだSophisti-Popの大名盤。(1990 CBS)

kings / Kuhn


 ブルックリンからの!若干24歳の!新進気鋭ビートメイカー!なんて、ありがちなイマっぽい肩書きを引っ提げたKuhn(キューン)。いつからかやけにSynth回帰 / Sweet Soul回帰が目に付くビートシーンに、異常な"臭み"でカウンターを仕掛ける彼の3作目が全曲素晴らしい。LuckyMeの朋友Obey Cityとの共作である"I Quit"はまさに先述したような売れ筋ど真ん中のアンセムトラックなのだが、後に控える3曲はいずれも癖の強い臭いを発している。捻くれたサンプル構築+複雑ながらもスマートなJukeビートで、ラスタに留まらず中東以東のトラッドの影響も感じさせる。過加工なコーラスが積み上げられた"Never Forget"はバッドトリップ感全開だし、"NWYRK"はWagon Christを現行ビートフォームでアップデートした様で非常に痛快だ。結局国内外でFootworkバブルはあっという間に弾けてしまったし、Trapの浸透にも不器用さを感じて心配してしまうけど、こういう頭の螺子が外れた音楽家はいつの時代にもどこかしらに自然発生するので、僕らも獣臭に鼻を利かせていかなくてはならない。(2012  CIVIL MUSIC)

Icky Mettle / Archers of Loaf


 91年結成、米ノースカロライナ出身の4人組による1stアルバム。彼らを紹介する際、USインディやローファイという共通点からかペイブメントが引き合いに出されることが多い。ただペイブメントが肩の力を抜いた、少しひねくれた感じであるのに対し、アーチャーズオブローフは個性的なヴォーカルが聴く者の心を揺り動かす、エモーショナルな一面を持っている。全体に漂うやるせない空気がなんとも言えない。2ndアルバム「Vee Vee」も名作だけど・・・やっぱりこっちで。(1993 Alias)

AQUA / 佐藤博


 2012年を振り返って、山下達郎と松任谷由実のベストアルバムリリースもそうだが、いわゆるシティポップスというものが最注目されていたように感じた。そのような年に佐藤博がなくなったのはとても印象的であった。ティン・パン・アレイへの参加でも知られる彼はまさに日本のポップスが色づく時代を作り上げたその人である。彼のソロ作にはこだわり抜かれた多重録音によるサウンドプロデュースがある。本作でも彼の代表作「awakening」(1982)で魅せたメロウな「シティ」感に加えオリエンタルな響きが相まり、そのオリジナリティを高めている。当時の最先端だった音像は今聞いても全く衰えていない。(1988 アルファ)

Flower bed / 渡辺美里




 渡辺美里5thアルバム。小室哲哉、岡村靖幸、佐橋佳幸、大江千里等作曲家陣が超豪華。
良い曲だらけなアルバムですが、特に聴きどころをあげるなら、渡辺美里作曲の「やるじゃん女の子」。なんでセリフ終わりでいきなりマイナーにいくのか。怖いよ、それが彼女の最後の言葉だったみたいな感じするじゃん。(1989 EPIC)

It's Your World / Gil Scott Heron & Brian Jackson




 昨年(2011年)5月逝去した事も多くのソウル・ファンには記憶に新しい、ギル・スコット=ヘロンとその盟友ブライアン・ジャクソンによるライヴ盤。CDは2000年にリリースされ、ソウル、ファンクのファンは
 勿論、レアグルーヴやヒップホップ等多方面から熱いリスペクトを受け続け、逝去時にはラップの先駆者として毎日新聞に訃報が載ったという、レジェンドの名にふさわしいギル爺の名盤中の名盤である。彼の元の父はキューバ系のサッカープレイヤー、母はオペラ歌手、離婚後の母の再婚相手はプエルトリカン、少年時代をプエルトリコ系コミュニティの中心地であると同時に、ビートニク文化の中心地であったNYのチェルシーで過ごすなど、後の音楽性への強い影響の伺うことのできる出自を持つ。表題曲は、この世界に生まれてきたのだから!自由を!という広大でアツいメッセージを、民族意識などはたはた薄い大和民族の一小娘にも感じさせてしまうスゴい曲。2曲目以降続くラテン・ジャズな楽曲からにじみ出るのは、プエルトリコやアフリカン・アメリカン、つまり米における人種的マイノリティとしてのアイデンティティの誇示。聞きやすくオシャレな曲に鋭利でラディカルなメッセージを挟みつつ、ポエトリー・リーディング、最早ラップのようなトラックを入れてくるあたりも彼が「黒いディラン」と呼ばれる所以である。Esther Phillipsのカバーでもソウルファンには身近なHome is where the hatred is、それからPaul WellerやJoe Bataanなどのカバーでも有名なThe Bottleも、このライヴでは曲中盤にて、オリジナルバージョンのわりとクールでさりげないイメージをこれでもかと裏切り怒号のように繰り広げる、プエルトリカン的血湧き肉踊るリズム隊のソロは、鳥肌モノで感極まること請け合いである。リリカル・テロリストな彼の音楽から発せられる重い詩のパワーの洗礼を受ける事は、全ソウル・レアグルーヴ・ヒップホップファンの使命ではないだろうか。
(1976 Arista)

The Vault: Old Friends 4 Sale / Prince


                                       
 殿下が長年の宿敵(?)ワーナーブラザーズとの契約解消のためだけにリリースした没曲集。ストックが数千曲あるとか世界で一番ブートレグが多いとか真偽の程は不明な伝説を数多く持つ殿下の、公式ブートレグといった意味合いが強いアルバム。ブートレグで名曲とされてきた曲も多く収録されているらしい。コンセプチュアルで時には疲れを催す殿下のアルバムから自由になった楽曲は、普段の殿下からは想像できないほど自由で、まるで私たちリスナーに語りかけてくるようですらある。運が良ければブックオフの500円コーナーに転がっているので、是非手に取ってみてほしい。ブートレグを死ぬほど集めた殿下のマニアの気持ちが理解できるはずだ。 (1999 Warner Bros / Wea)

100年後 / OGRE YOU ASSHOLE


 DTM・DAW・インターネットの発展が容易にしたもの、それは「音楽制作」ではなく「努力」だった。簡単に努力ができるようになった時代において、改めてエジソンの言葉を思い出すならば、クローズアップするべきは「1%のひらめき」である。「100%の努力」で作られた音楽にも美しさはあるが、しかしそれが市場に流通し過ぎている感は否めない。さて、問題はオウガ・ユー・アスホールの現時点で最新のアルバム『100年後』である。前作『homely』も良かったのだが、まだ微妙に「努力で作ってる感」があったのに対し、『100年後』はどう頑張っても努力だけでは作れないアルバムだ。と同時に、ある音楽が「フォロワー」を生むためには「ひらめき」が必須である事を実感させてくれる。彼らがデビューした時にはまさかこんなモンスターバンドになるとは思っていなかったが……。(2012 Vap)

The Time Has Come / Anne Briggs


 60~70年代初期を中心に活躍した英国出身のフォークシンガーAnne Briggsのセカンドアルバム。木漏れ日フォークと呼ばれるフォークとは対照的に森の奥でひっそりと歌われているような印象を受ける作品(ちなみにこの作品の邦題は『森の妖精』)。ギター1本をバックにして素朴に、そして淡々と歌い上げている。素朴という点では同年代の英フォークシンガーVashti Bunyanと似ている。しかし、その淡々と歌い上げる様は俗世間と距離を置こうとする意思表示のようであり、まさに『森の妖精』のような存在であり続けている。(1971 Topic)

METZ / METZ


 カナダ出身の3ピースロックバンドMETZ(メッツ)が名門レーベルSUB
POPから放ったデビューアルバム。ノイジーなギターと分厚いドラミングが初期のSUB
POPやNOWAVE系のオルタナティブ志向のバンドたちを連想させるが、彼らの新しさはハイファイな録音環境に裏付けられた異様なドラムのリバーヴと怒気溢れるボーカルの咆哮の凶暴性にあると思う。skrillexなどのダンスミュージックに流れた音楽ファンを再びロックの狂騒の中へ呼び戻すのは彼らではないだろうか。タイトル通り頭痛を呼び起こすような(?)ドラミングが光る#1 Headache、奇妙なPVが良い味を出している#7 Wet Blanketがオススメ。(2012 SUB POP)

Meltdown / Ash



 これはキッズによるキッズのためのキッズミュージックです。だからって舐めてかかる奴は俺がぶち殺します。Ashを時代遅れのロックと言う奴らを、俺は一生涯許さない。でも名作です。「1977」も「フリー・オール・エンジェルズ」も最高ですが、何故にこれを選んだかというと、この後割とすぐ脱退しちゃうシャーロット・ハザレイのコーラスが最高だから。なあ、一体これ以上俺に何を言えっていうんだ?まさるくんとも話しましたがムサい男3人のアッシュなんて全然好きじゃあないんですよ。それまでのドキドキするようなポップパンクとはうってかわってかなりヘヴィ&ダークな路線を示したアルバムで、ティムお得意の炎上ギターがブイブイいっておりギターキッズ冥利に尽きますね。同時期のMUSEとかにも通じる?切ない系UKヘヴィロックな感じもあって非常に涙腺を刺激されます。特に「Evil Eye」なんて聴いてると、ううううそうか、あいつ目つき悪いんか、ああああんちゃんがしばいたるけえ安心せえって気持ちになります。「Vampire Love」の駆け抜ける焦燥感も聴きながら待ってろ!今俺が助けてやるぜって感じの気分になって意味もなく帰り道に走り出したりします。とりあえず大好きなアルバムですみんなにきいてほしい。あとボートラのバズコックスのカバーは足腰立たなくなった元パンクスのジジイも踊り踊り出すような素敵なものになっておりますので、コイツらパンクがわかってねえわっつって聴かずに飛ばすような奴も俺がぶち殺します。(2004 Infectious Records)

Music Is The Healing Force Of The Universe / Albert Ayler


 ノイズやフリージャズや現代音楽などの、ディスクユニオンだったら全てごちゃまぜにアヴァンギャルドの棚にぶち込まれている音楽の多くは、雑誌やらブログやらでどんな凄い音楽なのか妄想を膨らましている時が一番楽しかったりして、実際聴いてみたらこんなもんか、とかなんだかよくわかんない、とかで期待外れなことが多い。語られ方と実作品との乖離が最も激しいジャンルの内の一つであると言って良いと思うのだが、それもある意味では仕方なく、だってアルバムのタイトルがMusic Is The Healing Force Of The Universeとかだったりするわけだし、実際聴いてみたらいわゆる癒しとは対極にあるような音楽だったりするわけで、そりゃなんか理屈つけて小難しいこと語ってみたくもなる。でもまぁ、大体全てを話半分に適当に聴き流しとくのが最も良いのであって、アイラーのサックスは凄くキャッチーだなぁと思っておけばそれで良い。キャッチーと思わなくても、まぁそれはそれで別に良い。なんか良い感じがしたり、また聴きたくなれば聴けば良い。
最後に、もちろんさん、ありがとうございました。(1969 Impulse!)

Smile from the Streets You Hold / John Frusciante


 言わずと知れた元Red hot chili peppersのギタリスト、ジョン・フルシアンテが麻薬中毒の真っ只中だった当時、ドラッグを買う金を得るためにほぼギター弾き語りのみで制作した2ndソロアルバム。レッチリの作品や、ジョンの最近のソロアルバムにあるような洗練された音とは全く違い、一聴すると無茶苦茶なギターの上に何を言ってるか分からない適当な叫び声を乗せただけの曲が並んでいるだけのように感じてしまうかもしれない。しかし、聴き進めていくうちに、根底にあるメロディの美しさや伴奏の良さに気づき、そしてジョンの「歌」がいかに魅力的なものであるかわかるようになっていくはずである。某Pitchforkで0点を付けられたり、ジョン自身も発表したことを後悔している的な発言をしているが、個人的には最高のサイケかつソウルアルバムだと思っている。(1997 Birdman)

面を洗って出直して来い / ガーゼ


 はあああいさあせんっっ!すんませんっっっ!って気分になりますよね聴くと。我が日本が世界に誇るハードコアパンクの大御所が放つ怒濤の4th。とにかく激烈なハードコアサウンドが猛スピードで矢継ぎ早に繰り出される様はまるでたくましい日本男児に往復ビンタを喰らっているかのようであります。そんで曲名からも察せられる通り歌詞は完全に説教です。それも飲み屋でクダ巻いてるクソじじい共の愚痴とは全くもってレベルの違うまっすぐでまやかしのない説教です。子供とかが悪さして叱りつけないといけない状況下になったとして、どっかの馬の骨がゴタゴタ抜かすよりもこのアルバム10回ぐらい爆音で聴かせて感想文書かせたほうがよっぽどいい教育になるんじゃあないでしょうかって話です。正直ガーゼの歌詞は小学校の道徳の教科書に載せた方がいいとさえ思います。聴けば聴くほど自分の至らなさに気づいて猛省、そして背筋が伸びます。で、またとんでもないのが、この人たちは年をとるごとに凄まじい音になっていくっつうことです。一心不乱に自らを鍛え上げ、ひたすら精進させる真の漢の姿がここにはあります。
はぁぁあいすんませんっっ!指導!指導!ありがとうございぁしたっっっっっっ!したっっっ!したっっっっっっっっっ!(一礼)(1997 XXX)

無垢な藻類 / トゥラリカ



 名古屋で活動するインディーズの3ピースバンド、トゥラリカの3曲入りシングル。音の粒を空間の隅々までに塗りつぶして「あちら側の世界」を目指すのがサイケデリック・ミュージックだとすれば、トゥラリカは最小限の音で「あちら側」を見せてくれるかなり危ないサイケデリックなバンドだと思う。ミニマルで冷徹な演奏にどこにも像を結ばないウィスパーボイスは、ファズギターなど使わずに僕らの身体を痺れさせる。しかも、バンド名の由来となった#1のタイトルは「いたずら」である。「いたずら」で「あちら側」に連れて行かれるなんて、たまったものじゃない。(2010 iscollagecollective)

真冬物語 / 堀込泰行(キリンジ)・畠山美由紀・ハナレグミ


 さて、真冬の到来である。ここで、一部の音楽好きの間では王道であろう一曲(シングル)を紹介したい。というよりは、「やっぱり冬はこの曲だよね。」という確認作業に近いかもしれない。堀込泰行(キリンジ)・畠山美由紀・ハナレグミの三人が歌う「真冬物語」。作詞は松本隆で、作曲は松任谷由実、プロデュースは冨田恵一という錚々たるメンバーだ。冨田ラボファミリーが作り出す音楽。言ってしまえば、名曲でないはずがないのだ。調べてみると発売は2004年1月1日。2013年がすぐそこに迫っていることを考えると、もう9年も前のことである。確かに歌詞の中の「フリース」が9年の歳月を感じさせる。
私としてはなぜかキリンジの「グッデイ・グッバイ」を思い出させる曲である。やはり冨田恵一プロデュースだからだろうか。この件に関しては、是非皆様からご意見を伺いたい。
冬の名曲として今ひとつ話題にならないのが、不思議なほどの名曲。まだ聴いたことがない方には、是非この冬のプレイリストに加えて欲しい一曲だ。(2004 EMI)

6/26/2012

Zawinul / Joe Zawinul

ジャズに初めてエレピを持ち込んだ(とされる)ピアノ奏者、Joe Zawinulの1971年に発表されたソロアルバム。彼はWeather Reportのメンバーでもあり、Miles Davisの"In a silent way"、"Bitches brew"といった傑作にも参加している。このアルバムの各曲には副題がついていて、「船でフランスからニューヨークに来たときの第一印象」などのように、過去の瞬間においてZawinulが見たり、感じたりしたことを追体験する、というのがコンセプトになっている。セッションプレイヤーのソロ作というと、単にリーダーが派手なソロをひたすら弾き倒すだけの作品が多い気がしてしまうのだが、このアルバムには全くそういうところが無い。 Zawinulのピアノは全曲を通して控えめではあるのだが、単なるエレクトリックジャズに収まらない、内省的かつ幻想的な音楽を展開している。フュージョンっぽかったり、また現代音楽の要素もあったりと、一言でこの独特なサウンドを表現することはできないが、とにかく聴く人の印象に残る作品だと思う。

Sound / Electric Glass Balloon

現SUGIURUMN・杉浦英治がボーカルを務めていたバンド。この前Youtubeで検索してみたら素人バンドがライブでカバーしてる映像しか出てこずびっくりしたが、デビューから6年で解散しているので、そんなものかもなぁと思ったりするが、僕は後追いなので単にライブ映像が観れなくて残念という程度のものなのだが、ががが。Teenage Fanclubと近いと言われたりするけれど、とても渋谷系的なギターポップ。フリッパーズとかとも近い。

STAn / STAn

「結局STAnとstonesだけが全てに絶妙な距離保ってる/色んな奴が色々言っても 言っとくけどさ 一個もあってない」(#1.After all)最高の歌詞だと思った。メジャーとの契約が切れ、インディーズでうだつの上がらない活動を強いられてきたスリーピースロックバンドの最高の復活宣言だった。聴けばそれとわかる独特なギターリフ(弾きながら歌えるのが信じられない)と骨太なリズム隊の絡みに粘っこいボーカルが乗るサウンドはそのまま に、以前からのシニカルな自己肯定の果ての激情の表現がより洗練されていると感じた。どんなバンドも、ひとたびデビューすれば「○○系」とか「○○フォロワー」といったように括られ好き勝手に評価される時代において、STAnはその全てを突き放し、本気で「いいよ そんなんどうでも」(#2.Rough diamond future)と究極的な自己肯定を歌う事ができる唯一のバンドだったと思う。このアルバムと配信シングルのリリースを最後に彼らは突如解散してしまうが、一度ダメになったバンドがもう一度這い上がろうとする一瞬のきらめきが惜しみなく詰め込まれている。無名なせいで旧作もきちんと評価されていないのが 残念。再評価を待つ。

City Life / Steve Reich

Come Out、It's gonna rain、Piano Phase等、漸次的位相変異プロセスと言われる、要するに段々ズレていく音楽から、徐々にフレーズに音が足されていき、更にそれに音符一つズラして追いかけるフレーズが重なり・・・という加算的な音楽に変化、そしてその後人の声や環境音をサンプリングし、そのサンプリングされた音を楽器が真似る等の手法の進化の先に生まれた作品。というような話は一旦置いといて、とにかく聴いてみてください。夜寝る前に聞くときっと良い夢見れる。

忘れてもいいよ / すきすきスウィッチ

佐藤幸雄はなんて素晴らしい歌を作る人なのだろうか。本作の音質はとても良いとは言えないクオリティだが、その音質の壁を突き抜けてリスナーの心を射抜くだけのモノが彼の歌にはある。すきすきスウィッチの現時点で唯一の作品である『忘れてもいいよ』にはテクノポップな初期、フリップ&イーノみたいな中期、鈴木惣一朗とのギターボーカル&ドラムボーカルのデュオ体制になった後期と全時代の音源が網羅されている。スタイルこそバラバラだが、いずれの時代も佐藤幸雄の歌が核になっていることは間違いない。先日なんと20数年ぶりに再始動することが発表されたすきすきスウィッチ、今後の動向に注目です。

Lucky Hands / Thomas Brinkmann

ジャーマン・ミニマルの大御所であるThomas Brinkmannの13枚目のアルバム。もともと実験的なテクノ作品を多く発表していたが、最近ではオーストラリアの前衛ギタリストOren Ambarchiとコラボするなど、活動の幅は広がる一方のよう。本作Lucky Handsではそんな彼の実験性とファンクを再構築した音楽性が高い次元で結実している。「太いキックを鳴らしとけばノレるだろ」と言わんばかりの雑な一次元リズムの曲は勿論無く、上物・ビート・余韻までも含めた全ての音が一体となり一つの多次元リズムを構成していると感じられる希少なテクノ作品。多くの音の繊細なバランスの上に成り立っているので、気に入るかは再生環境次第かもしれない。

Night Through / Loren Mazzacane Connors

NY地下シーンの即興ギタリスト、Loren Mazzacane Connorsのシングルと未発表音源を収録した編集盤。ジャンルは一応アンビエントとか実験音楽ということになるのだろうか。この人は大変な多作家であり、すでに50枚以上アルバムを発表していて、過去にはJim O'rourkeやDavid Grubbs、灰野敬二などとコラボした作品もある。大体どの作品も一本のギターを爪弾いて鳴らされたアルペジオやドローンだけで構成されている。器用なギタリストではなく、そもそもパーキンソン病を患っているので、普通の人と同じようにギターを弾くことすら出来ないらしい。しかし、彼によって鳴らされる音色はこの上なく感情的であり、とてつもない哀感に満ちあふれている。流れてくる「音」そのものにこれほどまで感銘を受けた音楽は他に無かったと思う。廃盤になってしまっている作品も多い中で、この編集盤はそこそこ手に入りやすいようである。

French Cafe / V.A.

例えるならば、このアルバムは、フレッシュネスバーガーでライムソーダを飲みつつ聴きたいアルバム。少しだけオシャレを気取りたいときに是非聴いていただきたいと思う。オススメは7曲目のウィスパーボイスで聴かせるCoralie ClementのLa Mer Opale。彼女はまさにフレンチ・ロリータという言葉がよく似合う。そして、スウィングを感じるアップテンポな11曲目SanseverinoのMal O Marins。彼は仏版グラミー賞を受賞したことのあるアーティストで、舞台俳優を目指してみたり、バンジョーを弾いてみたり。このアルバムを聴いてオシャレを気取るもよし、またはフレンチポップへの架け橋にするもよし。このPutumayoレーベルのCDたちは、ワールドミュージックビギナーにオススメです。

Einstein on the Beach / Philip Glass

ミニマルミュージックの代表的な作曲家であるフィリップグラスの初期作品。『浜辺のアインシュタイン』というオペラのために作られた楽曲。テーマは進歩と静止、そしてそれらの交錯。フィリップグラスの作曲の特徴は、加算方式と呼ばれるものである。あるパターンを繰り返し、そこにもうひとつのパターンを加算し、新たなパターンを作る。それに対して、さらに新しいパターンを加算する。その繰り返し。慌ただしいパターンの変遷、まくしたてるようなボーカル、暴力的な音の繰り返し。人類の歩んで来た道、あるいは歩んで行くであろう道を早送りで見せつけられているような恐怖感。その速すぎる流れに一人取り残された恐怖感。

言葉にならない、笑顔を見せてくれよ / くるり

いやぁ、くるりも大人になりましたね。今回は簡素なアレンジだからこそ歌のメッセージがすっと入ってくる、歌を大切にした歌謡アルバムになっています。 ユーミン参加曲(#7)も収録。今までのくるり(特に岸田繁)を考えると「こんな力みの無いポジティブな曲を書いてくるなんて、よくここまで来たなぁ」 と、ファンとしてグッとキますね。カッコイイ音楽ももちろん良いけど、カッコつけてばかりじゃ疲れるし…たまには素直に、純粋に「歌ってええなぁ。」と思える幸せをこの一枚は与えてくれます。くるりからのメッセージはアルバムタイトル『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』の通り。みなさん、もう悲しいストーリーに依存するのも飽きてきたのでは?そろそろ日常のきらめきに目を向けてみてはいかがでしょうか。“温泉”(#5)はアンセム。ジャケもブックレッ トの写真も必見です。昔のヒリヒリした感じが好きだったという人も、是非久しぶりに聴いて欲しい一枚。もちろん、この作品からくるりをフォローするのも大 アリです。

Chiaroscuro / Einar Stray

1990年生まれ(筆者と同い年!)のノルウェー人ピアニスト/シンガー・ソングライターEinar Stray(アイナル・ストレイ)を中心としたバンド。紹介文には「スフィアン・スティーヴンス + シガー・ロス」なんて書いてあって、正直「どうせ猿まねポストロックなんだろうな」、と思って聴いたのを覚えている。しかし、じっくり彼の音楽を聴いて、その考えを改めることになる。確かに、先の文章に上がったバンドの影響を受けてはいるけれど、アイナルの音楽は、彼の出自が「myspace」であったことが象徴しているように、インターネットで世界中の様々な音楽を吸収した上で理知的に流麗な世界観を構築している一方で、近所の楽器ができる仲間で何となく音を出していたらいつの間にかできあがってしまったかのような手触り感も残されているように感じる。インターネットの理性と、トラディショナルで土着的な繋がりの持つ温かみの共存。同い年で、こんなに綺麗で温かみがあり、神経質でない軽やかな作品を生み出せる才能とネットワークにただただ驚くばか り。#2.Yr heart isn't a heart、#6.Arrowsが名曲。

ヒカリモノ / 及川光博

ご存知、ミッチーこと及川光博が2004年にリリースしたアルバム『ヒカリモノ』。彼というと俳優業のほうが目立つ節があるが実はもともとバンド活動からの歌手デビューが先だったり自ら作詞作曲も行うなど(このアルバムの殆どの曲は他者からの提供だが)歌手活動にもかなり力を入れているようだ。その音楽性は本人がプリンスのファンを自称しているようにJpop界での正統な(?)岡村靖幸フォロワーといえる。その徹底したキャラクターと独特のねちっこい歌い方がたまらない。日本音楽会随一の伊達男、及川光博の旨みを十分に味わえるアルバムである。バスローブを着てシャンパンを開けながら聞きたい一枚。

Room With Sky / John Hudak

「この作品の背後に持つアイデアは、聴き手が晴れた日に日当たりの良い部屋にいる様な感覚を伝えることです。」私の部屋はあまり日当りは良くないが、実際に良く晴れた日に部屋に引きこもりこの曲をかける。ガラス一枚で隔てられた外の世界がひどく遠く感じる。神秘的で掴み所のない音がただただ揺れている。外には素晴らしい世界が待っているというのに、なぜ引きこもっているのだと暗澹たる気持ちになる。そうしてる間も、音は揺らめいている。この掴み所のない音をしばらく聴いているうちに、空間や時間に対する認識や自己という認識が虚ろになり、すべてが輪郭を失う瞬間に出くわす。その瞬間から自我が境界線を持たなくなり、作者のいう”感覚”と自己が未分状態になる。ジャスト60分一切の起伏がないこの曲のクライマックスは輪郭を失った自己とその”感覚”が混じり合い、一体になっていることが意識できたときに訪れる。

日本の笑顔+水に流して / ヒカシュー

シングル『日本の笑顔』とアルバム『水に流して』を1つにまとめた再発盤(1984年当時も1つにまとめる予定だったが、諸事情によりできなかったとか)。『日本の笑顔』の4曲はテクノポップっぽさが残っており、特に表題曲はファンの間でも人気がある(らしいです)。『水に流して』では、ヒカシュー版 サーフミュージック(?)あり、ニューウェーブの影響を受けたと思われる曲ありと、『うわさの人類』でみせたロックよりな路線かと思いきや、後半につれジャンルわけできないヒカシュー独自の音を鳴らしてます。メンバーが変わったこともあり、ちょうどヒカシューの過渡期といえるかも。なんだかアルバムとしてのまとまりはないというような書き方をしてしまいましたが、曲は本当にかっこいいです。ヒカシュー=テクノポップという人に是非聞いてほしいアルバム。

3/24/2012

無惨の美 / 友川かずき

多数リリースのある氏には傑作とうたわれる作品は何枚かあるけれど、自分はまずこの一枚を推したい。弟の死を歌うタイトル曲や、消えていく故郷を描いた 「井戸の中で神様がないていた」など、80年代という喧騒に押し潰され、負けて死んでいったものたちへの小さくて壮大な、刺すように美しい鎮魂歌が並ぶ。 1985年リリース。

Flagment Of Paradise / 杉本拓

フィリップ・ロベール著「エクスペリメンタル・ミュージック」のなかで沈黙のギタリストとして紹介されていた杉本拓は現在既に無音の演奏から方向転換して いるが、無音の演奏を始める前は音響的即興といわれる類の演奏を行っていた。「Flagment Of Paradise」は杉本が音響的即興を始め、その可能性を探っていた時期の代表作である。この後杉本は、突如としてステージでほぼ音を出さない、という 演奏スタイルに変化し、今では即興演奏自体を全くと言っていいほど行っていない。杉本は興味を音自体からコンテクストに移し、現在は作曲によってそれにつ いての実験を重ねている。

JUNK LAND / 玉置浩二

もしあなたがこのページに目を留めるぐらいには音楽が好きで、玉置浩二を単にオンナとイチャイチャしているだけのチャラいオヤジだと思ってILLのならば考えを改めるべきだ。彼は実際のところ、超・実力派のシンガーソングライターなのである。本作『JUNK LAND』は彼の脂が最も乗っていた90年代後半のアルバムで、特に1曲目の「太陽さん」は信じられないくらいの名曲。こんな曲作れたらそりゃ青田典子とイチャイチャできるよな…(結局そこかい)。アルバムカヴァーも産業廃棄物にあふれた不毛の地に1つ生える植物を、真っ裸の玉置浩二が掴んでいるという衝撃的なモノ。そんな大胆なことするからまた皆から誤解を受けるのに……。これの前作『CAFE JAPAN』もクオリティの高い名盤なのでチェックするべき。

Moenie and Kitchi / Gregory And The Hawk

ウィスパー系女性ボーカルファン必聴の1枚。アコースティックギター中心のフォーキーなサウンドに、メレディス・ゴドルーのキュートで、でもちょっぴりメランコリックな歌声が素晴らしい作品。今作から、マイスパレードのアダム・ピアースがプロデュースに加わり、従来のフォーキーなサウンドに、シューゲイザーテイストのキラキラしたサウンドが加わった。ジョアンナ・ニューサムやイノセンス・ミッションが好きな人におすすめな1枚。ジャケット通りのキュート でメルヘンな世界が待ってます。

SCUBA / P-MODEL

今年の春に出た名著『宅録ディスクガイド』に一つだけ文句をつけるならば、この作品を取り上げなかったことだろう(ヒカシューの『1978』は載っていた のに!)。1984年にカセットブックという形態で発売された本作は(同梱されたブックレットの内容も含め)間違いなく現在の平沢進の「原形」かつ「元型」である。他のメンバーを殆ど参加させず、平沢がソロ作品のようなスタンスでユング心理学にアプローチ。自宅録音に近い環境でレコーディングしたためP-MODELのオリジナル・アルバムにはカウントしにくいが、楽曲のクオリティはメチャ高い。現在では中古市場に賭けるか、3万円するボックスセットを購入しないと聴けないレア盤。後に平沢がCDで作り直したバージョンが2つある(これらは入手が比較的容易)が、遠藤ミチロウのナレーションが入っているのはカセット盤のみということもあり、やはり最高は最初のこれ。

Relax / Das Racist

ブルックリンの3人組ラッパーの1stアルバム。(うち1人はステージ上でコンピューターのキーボードを振り回してアジるだけ……という映像もあるが)こ れまでネット上で2枚の、ミックステープと呼ぶにはあまりにも完成されたアルバムを無料でリリースしているので実質3rdアルバムと呼ぶべきだろう。ナン センスさの中に社会への批判を詰め込んだリリックと、インディダンス・ディスコ的な、万人に開かれた雰囲気を失わないバックトラックが素晴らしい。個人的 には、強迫症的なtr.1、Diploがプロデュースしたミニマルなtr.7、音の案配が絶妙なtr.9がお気に入り。マスタリングがあのスターリングサ ウンドというのもポイント高。

season / season

最近活動を再開したseasonの1stミニアルバム。日本エモ界の名盤的な感じで紹介されてるのをたまに見ます。(日本エモ界自体には全く詳しくないし、そもそも日本エモ界なんて言葉自体存在しないが)一曲一曲も短いし、曲数も少ないのでアルバム通して聴きやすい。そして、どの曲もメロディーが凄く良 いです。泣きながら笑顔で叫んでいるような歌声も魅力。長らく廃盤の憂き目にあっていましたが、1stフルアルバムの発売に合わせて再発するようです。しかし、フルアルバムまで10年とは・・・。

アンダーグラウンドパレス / 豊田道倫&ザーメンズ

パラダイスガラージ=豊田道倫から2011年1月1日に繰り出された一枚。全曲弾き語りだった前作「バイブル」とは違って、前々作「ABCD」での昆虫キッズとのコラボが内面化、昇華されたような、荒々しい作品となっている。特にタイトル曲「アンダーグラウンドパレス」の狂気は本物。「西成、26時」の ような美しい曲もそっと置かれている、ウェルメイドなロックアルバム。

HOSONO HOUSE / 細野晴臣

ある音楽を聴いているとき、その音楽とその瞬間の気温や湿度や景色など、要するに季節感のようなものが「合致した」ような感覚になることがある。そしてそうなった音楽はしばらくの間自分の中で無敵状態になる。ずっと前から持っているこのアルバムに今月はとても頻繁に手を伸ばした。この感覚の要素のいくらかは詞の内容(ここでは冬越えなど)で説明できるだろう。でもそれだけでは説明できないもっと直感的で曖昧な心の作用のようなものがきっとあるような気がする、というかあるとおもしろい…って全く曲とかアルバムの説明をしてないわけだけど、この紙を手にとったあなたならもちろんこのアルバム聴いてるよね!ってことで許して…

The Honeybunch TV Show / Hairsalon

こやまだいち氏の宅録1人ユニットHairsalonの唯一のアルバム。2005年作品。温かみのあるカラフルなジャケットもこやま氏によるもの。これをジャケ買いせずに何をジャケ買いするのか。ソフトロック、AOR、JAZZ、A&Mサウンドなどを基調にしたシンセ・ポップに凝ったアレンジ、中性的、匿名的なボーカル&コーラス。このアルバムを通して感じられる冬っぽさはリバーブやシンセの音のもやっとした感じがそうさせるのでしょうか。少し肌寒い頃にマフラーをして聴きたいアルバムです。

... Like Nothing Else You Ever Tasted / Bobbie's Rockin' Chair

単にパーフリ、渋谷系フォロワーみたいに語られがちなBobbie's Rockin' Chair。しかし彼らほどソフトロックを愛し、実践したグループは他にいないと思う。このアルバムは以前に出したEPをまとめた編集盤で、韓国 Beatball Recordsよりリリースされました。レコード好きな人たちがバンドやってみましたって感じがいいです。男女混声パパパコーラスに感涙。

くまちゃん / モダンチョキチョキズ

邦楽史上最大規模の器用貧乏コミックバンド(?)モダチョキの4枚目にして最後のオリジナルアルバム。面白いんだか面白くないんだかよくわからないままに繰り出される数々のネタ、ジャンルレスで妙にハイクオリティな楽曲と、次々に入れ替わるメンバー等、油断してかかると消化不良間違いなしの詰め込み過ぎな一枚。これはもちろん、褒め言葉。アルバムの最後に予告されている次回作のリリースを待ってます!1994年リリース。

There's Nothing Wrong With Love / Built to Spill

アイダホというとポテトを連想する人が多いかと思います。僕もです。USインディー界で異彩を放っているらしいが日本での知名度は寂しいアイダホ出身のバンドBuilt to Spillの2枚目のアルバム。良メロと少しサイケデリックなギターサウンドが特徴的なバンドだがこのアルバムではポップ分がより前に出たサウンドになっ ている。次作「Keep It Like A Secret」(1997)でその地位を確固なるものにしたらしい(もちろんこちらも超名盤)、彼らだがインディー時代のこのアルバムでもそのポップセンスは抜きん出ており、メジャー時代に比べると音が荒削りではあるがその分、曲の良さが引き立っている。4曲目の「Car」に代表されるようなメロディアスで甘いボーカルに不安定なギターのアンサンブルが微妙に絶妙にズレていてこれがとてもクセになる。良き90年代のちょっと田舎くさい、ひねくれたギターポップ。

Ames Room / Silje Nes

ノルウェー出身のいまいち読み方に自身の持てないシンガーソングライターSilje Nesの2007年にFat Catからリリースされた、1人で全ての楽器を扱った自宅録音アルバム。彼女のデビュー作である。その端正なルックスからか歌姫的なポジションで扱われるがその才能は確かである。Nadjaみたいなアートワークとは裏腹にとても繊細なウィスパーボイスとアコースティックに様々な音が加えられ、それぞれが魅力的で落ち着きのある雰囲気を作り出している。ジャンルこそエレクトロニカという分類をされるもののリコーダーやおもちゃのような音、よくわからない効果音が録音されており遊び心たっぷりな気もするが絶妙にマッチ。ファナ・モリーナとよく比較されることが多いが、より自然でやさしい音響はまさにノルウェイの森である。曲が複雑なわけではないがとても深みがあり洗練されている印象を持つ。2010年には二枚目となる「Opticks」がリリースされ、ジャケットは相変わらずハードコアな匂いを漂わすもののこちらもオススメ。

A Forest Dark / Satan is my Brother

ミラノの6人組ダークジャズバンドの2ndアルバム。1911年にMilano Filmsで作成されたL'infernoという無声映画の仮想のサウンドトラック、というコンセプトの作品。(初回100枚にはこのL'inferno のDVDがついてくるのだが、英語の字幕がついていても得体の知れない作品だった。)ダークジャズというとBohren & Der Club of Goreのようなグワーッと重くてアダルティな感じの音を思い浮かべる人も多いと思うが、こちらはずいぶんウェットな音で、37分という短い尺の中でも豊かな世界観を感じさせる。地味なようでスルメ的中毒感を持つ音響を作り出したのは、やはりミラノの若手音響作家であるAttila Faravelli。

... And The Ever Expanding Universe / The Most Serene Republic

Broken Social Scene及びそのメンバーたちのバンドが所属するカナダのレーベル、Arts & Craftsの男女7人組バンド。レーベル初のBSSメンバーではないバンドだそうです。(BSSは最大20人越えらしいですが何人おんねんと言いたくなります)。大所帯でカナダというとまさに先述のBSSやArcade Fireですが、カブってるという感じはあまりせず独自の雰囲気を持っています。クラシカルな室内楽かと思いきやきらきらシンセの四つ打ちが出てきたり轟 音ギターもちゃっかり入ってたりしますが、一貫してグッと来るメロディがあることでただ突飛なことをやっているという印象は無いと思いました。いわゆる 「ポップでローファイ」という枠からもいい具合にはみ出した感じがとても好きです。